【氷の禁域】月の虚空に猫背のままで凍った法王 夏石番矢/新俳句入門*特別編 - まほろば俳句日記

月の虚空に猫背のままで凍った法王   夏石番矢  最新句集『氷の禁域』(アマゾン通販)より

月の出ている空または闇は、人間がまだそこには存在しない《虚》の時間を指し示す。その空無の《沈黙》の渦中で『猫背のまま』で凍ってしまう『法王』とは、いかなる存在なのであろうか?それとも、そもそもこの世とあの世を隔てる時間の不可逆性は、わたしたちの存在の端緒となる【発語】を統べる【法王】の不存在から逆算される幻影に過ぎなかったのだろうか。いずれにしても、この『法王』の存在の曖昧さは、長い《沈黙》を経たこの世界の彼方に見え隠れする《死》の予兆なのであろうか。・・・《続く》