実写からするか?アニメからするか?

かつてアニメ化してヒットした漫画を実写で映画化・ドラマ化した作品は、よく批判の対象となります。成功例もありますが、アニメや漫画の印象が強すぎるあまり、実写ではその魅力を再現しきれていないことは本当によくある事例です。一方で、実写化したのちにアニメ化した漫画や、実写ドラマをのちにアニメ化した、というものもあります。実写作品に負けないヒット作になったアニメもあれば、実写作品の印象が強すぎてアニメ化が知られていない作品もあります。

2018年にスタートするTVアニメ「SSSS.GRIDMAN」は1993年に放送されていたTV特撮ドラマ「電光超人グリッドマン」を現代風にアニメ化した作品です。これを記念して、実写化したのちにアニメになった漫画、または実写作品がアニメになった作品を調べてみました。

サザエさん

1948年に東屋トン子主演で実写映画化。1955〜57年まで高杉妙子主演で月曜日から土曜日までの5分番組で実写TVドラマ化。1956年から61年まで江利チエミ主演の実写映画シリーズが10本、その後1965〜67年まで再び江利チエミ主演で実写TVドラマ化。そしてようやく1969年10月5日にアニメが始まります。その後も何度か実写ドラマ化してますが、アニメ→実写化との線引きがややこしくなるので省略。

あんみつ姫

く、く、く、く、クエスチョン のOPを思い出す人もいるでしょうが、1954年の雪村いずみ版、1960年の鰐淵晴子版の2度の実写映画化、そして1958年の中村美沙緒版の実写TVドラマ版、1983年の小泉今日子版を経て1986年10月にようやくアニメ化。

怪人二十面相」「少年探偵団」

金田一少年の事件簿」「名探偵コナン」誕生以前は推理ミステリーの入門書といっても過言ではない江戸川乱歩原作のシリーズ小説は、1954年に「怪人二十面相」が初の実写映画化したのち、何度も実写映画化、TVドラマ化されていますが、1968年に「少年探偵団」が「わんぱく探偵団」としてアニメ化。小林少年が不死身の体を持つ「TRICKSTAR」(2016年)ってアニメもありました。

赤胴鈴之助

1957年に梅若正二、桃山太郎主演の実写映画シリーズ、大阪テレビラジオ東京とでそれぞれ実写TVドラマ化(ラジオドラマ版も同年)。そして1972年4月にアニメ化。アニメ版の主題歌はTVドラマ版・ラジオドラマ版とほぼ共通。

月光仮面

日本初のスーパーヒーローとも言える1958年の大ヒットTVシリーズは、変身ブーム(第2次怪獣ブーム)の1972年に「正義を愛する者 月光仮面」と題してアニメ化。「ごぞんじ!月光仮面くん」なんてアニメもありました。

鉄腕アトム

1963年に日本初のTVアニメとしてあまりにも有名な手塚治虫の代表作ですが、それに先んじて1959年に実写TV化されていたことはコアな特撮ファンだけが知ってる事実です。そのオープニングには一部にアニメーションが使われていました。

「鉄人28号」

1963年のTVアニメは「アトム」と並ぶロボットアニメの元祖と称される横山光輝の代表作ですが、それに先んじて1960年に実写TV化されていたことはコアな特撮ファンだけが知っている事実です。鉄人がほぼ等身大なのは、この頃の映像化の限界だったのでしょう。

少年ケニヤ

山川惣治の冒険絵物語は1950年代の少年の必修科目でした。1961年に実写TVドラマ化されていますが、1984年に大林宣彦監督で何故かのアニメ映画化。今のご時世では映像化はイロイロと無理かも知れません。

「忍者ハットリくん

藤子不二雄(まだFとAに別れていない)原作作品ではすでに「オバケのQ太郎」がアニメ化されていたにも関わらず、1966年に実写TVドラマ化。翌67年にも忍者怪獣ジッポウとコンビを組んで再び実写TV化。ようやくアニメ化されたのはその15年後の1981年。2004年にインドでアニメ版が大ヒットして新作アニメシリーズが作られているほどだが、アチラの子供達は実写ドラマや香取慎吾の実写映画版のことは知っているのだろうか…。

黄金バット

元々は紙芝居で人気だったヒーロー。1966年に実写映画化ののち1967年4月からTVアニメ化されたことはご存知の方も多いでしょうが、Wikiによると、1950年に東京映画(のちの東映)配給・新映画社製作による「黄金バット摩天楼の怪人」という映画作品があったそうです。出演の一人に美空ひばり

マグマ大使

1966年、日本初のカラー特撮TVドラマ。1992年から全13話で作られたOVAオリジナルビデオアニメーション)はみたことありません。

ウルトラマン

説明不要の日本TV特撮ヒーローの代名詞。「マグマ大使」の13日後の1966年7月17日に放送開始。1979年に「ザ・ウルトラマン」としてアニメ化。主人公ハヤタの息子が特殊スーツを着てウルトラマンとなる漫画作品「ULTRAMAN」も2019年にアニメ化予定。

悪魔くん

水木しげる初の映像化作品は「ゲゲゲの鬼太郎」ではなくて1966年の実写TV特撮「悪魔くん」。1986年には「鬼太郎」とともに「月曜ドラマランド」枠で単発実写ドラマにもなった。1988年に「聖闘士星矢」の後番組としてついにアニメ化。

仮面の忍者赤影

1967年に大ヒットした無敵の忍者特撮TVシリーズは、1987年にTVアニメ化。wikiによると特撮版の脚本を書いた伊上勝の息子である井上敏樹がアニメ版の脚本を書いていたらしい。

コメットさん

1967年の九重裕三子版、1978年の大場久美子版の2度の実写TVドラマ化を経て、前田亜希版のTVアニメが2001年に放映。九重裕三子が母親でもある星国の女王(ナレーション)役、大場久美子が人間界に残った叔母役でそれぞれ声の出演。

ジャイアントロボ

1967年の実写TV版とほとんど共通点のないOVA版が1992年からスタート。怪獣やロボよりも強いおっさん軍団・十傑集がいなければ、実写版を超えることはなかったであろう。2007年に「GR-GIANTROBO-」として再びアニメ化。

水戸黄門

1954年からの実写映画シリーズ、1969年からのTVドラマ化を経て、満を持してのTVアニメ化「まんが水戸黄門」は1981年放送開始。「実写では不可能な演出を意識していた」という。

人造人間キカイダー

1972年に実写TVシリーズが始まった「仮面ライダー」と並ぶ石ノ森章太郎の代表作の一つ。原作漫画に忠実なアニメ化は2000年に「人造人間キカイダー THE ANIMATION」が、2001年に続編の「キカイダー01 THE ANIMATION」が放送されている。

レインボーマン

1972年の実写TV版の年後、リアルロボットブームの波に乗ろうとしたのか、巨大ロボ・レインボーセブンを加えて1982年にアニメ化。死ね死ね団は日本人に恨みを持つ外国人どころか宇宙人になっちゃった。

レッドバロン

1973年の実写TVからどうすれば1994年のTVアニメ版のような格闘ロボットになったのだろうか…。Gガンダムの所為?(実際は偶然らしい)

「ダメおやじ」

1974年4月からのTVアニメよりもわずかに早く、1973年11月に三波伸介主演で実写映画化されています。監督はなんと野村芳太郎

はだしのゲン

1976年〜80年にかけて3本の実写映画化ののち、1983年7月にアニメ映画化、1986年にはアニメ映画のパート2も公開されています。アニメ映画の製作には原作者の中沢啓治も関わっています。

野球狂の詩

1977年3月に日活が実写映画化。アニメ化は1977年末の1時間TVスペシャルが最初。なお「ドカベン」は実写映画よりもアニメ化の方が早かった。

こちら葛飾区亀有公園前派出所

1977年12月に東映で映画化。東映はこの1977年だけで「ダボシャツの天」「ドカベン」「空手バカ一代」「ドーベルマン刑事」「サーキットの狼」「ゴルゴ13」「こち亀」と漫画の実写映画化を連発している。なおTVアニメ化は連載開始から20年目の1996年。その前にイベント上映用として1985年にタツノコプロ制作でアニメ化されているらしい。

ブラックジャック

1977年の実写映画「瞳の中の訪問者」、1981年のTV実写ドラマ「加山雄三のブラックジャック」など何度も実写化されているが、アニメ化は1993年のOVAが初。

ベルサイユのばら

1979年10月から放送開始のTVアニメ版よりわずかに早く1979年3月に実写映画が公開されている。監督はジャック・ドゥミ、オスカルはカトリオーナ・マッコールとまるでフランス映画のようだが、製作は日本のキティ・フィルム。

「伊賀野カバ丸」

1983年8月にジャパンアクションクラブ総動員の実写映画化ののち1983年10月からTVアニメ化。「ベルばら」もそうだと思うが、映画とアニメは連動企画で、当時の原作漫画掲載誌には「実写映画化&TVアニメ化!」のアオリが踊っていたことだろう。

生徒諸君!

1980年に実写TVドラマ化、1984年に小泉今日子主演で実写映画化ののち、1986年に単発のTVアニメ化。原作漫画の連載は1977年〜85年なのでヒット作にして映像化は遅かったようだ。

時をかける少女

1972年に「NHK少年ドラマシリーズ」として「タイム・トラベラー」の題名で初の映像化。1983年に大林宣彦監督の劇場映画・原田知世版、1985年に「月曜ドラマランド」の南野陽子版、1994年に「ボクたちのドラマシリーズ」の内田有紀版を経て2006年に細田守監督でアニメ映画化。アニメ映画は過去作品の続編という位置付けのオリジナル作品といってもいい。

スケバン刑事

1985年から1987年にかけての実写TVドラマ3部作が一部世代に強烈な印象を残しているが、1991年にOVAとしてひっそりアニメ化されている。

釣りバカ日誌

1988年から西田敏行三國連太郎のコンビで作られ続けた実写映画シリーズが一般的には有名だが、2002年のTVアニメ版は「爆竜戦隊アバレンジャー」でアニメと実写の次元の壁を超えて共演した事でも有名である。

「YAWARA!」

浅香唯主演の実写映画が1989年4月に封切り、TVアニメは1989年10月放送開始。これも「映画化&アニメ化!」の連動企画だったのだろう。

「打ち上げ花火、下から見るか?横からみるか?」

1993年の岩井俊二監督の実写映画を2017年8月に新房昭之監督でアニメ化。岩井俊二はアニメに何かこだわりがあるのか、2005年に自身が監督した映画「花とアリス」の前日譚となる「花とアリス殺人事件」を自らの監督でアニメ化している。

「ピンポン」

2002年に曽利文彦監督で実写化されて大ヒット。2014年にTVアニメ化。曽利文彦監督は、私の親父が衣料会社に勤めていた頃の同僚の息子さんだそうだ。頑張ってそうな割にその後の評価は微妙で、「鋼の錬金術師」の実写でトドメを刺してしまったように思える。

牙狼GARO)」

2005年から続く雨宮慶太の特撮TVシリーズですが、2014年の「牙狼 炎の刻印」と2015年の「牙狼 紅蓮の月」はTVアニメ。2016年の「牙狼 -DIVINE FLAME-」は劇場用アニメ。

この世界の片隅に

2011年に北川景子主演で終戦記念スペシャルドラマとして単発の実写化されたのが最初の映像化。2016年のアニメが大ヒットするまではこのドラマがあったことすら知る人は少なかったのではなかろうか。

人形劇のアニメ化(「チロリン村のくるみの木」とか)や日本以外の作品(アメコミヒーローとか)は、もうややこしくなりそうなので止めました。各自調べていただけるとありがたい。また、他にも実写→アニメ化の作品があれば知らせてください。

ところで「SSSS.GRIDMAN」は米ロサンゼルスの「アニメエキスポ2018」でも紹介されて大好評だったそうです。1994年に「パワーレンジャー」のブームに乗って「グリッドマン」の特撮部分以外を作り直した「SUPERHUMAN SAMURAI SYBER SQUAD」を知ってる人も少なくないと思うのだが、アメリカの人たちはどう感じてくれたのだろうか…。