定期考査の失敗を繰り返させない〜リベンジ自習会

日々の学習の中で「伸びている実感」を抱いたり、自らの進路希望の実現に展望を持てたりすることは、学び続ける意欲を維持するために欠かせません。少なからぬ生徒が模試成績を通じてそれらを感知しますが、模試の点数に日頃の努力がダイレクトに表れるとは限らず、もっと確実に手応えを確かめられる場が必要です。

その一つが、日々の学習の仕上げとしての定期考査ですが、生徒にきちんと準備して臨ませ、成果や手応えを実感させるののは容易ではありません。特に成績不振を繰り返す生徒への指導には頭を抱えます。

❏ 日々の学びの成果を実感するには模試だけでは不十分

模試の場合、たとえ準備に余念なく挑んでも、出題内容次第で、それまでの努力が点数に現れる度合いが違います。

学校のカリキュラムと模試の出題計画が一致するとも限らず、直近の指導期間で重点とした事柄と模試の出題意図がずれるのもしばしばです。

また、努力の結果が点数に現れ、実際の成績が動くのは、学んだことのカバーする範囲が十分に広がってからなので、努力と結果の間に一定のタイムラグが生じます。

目に見える結果がでないのに何か月も頑張るのは誰にとっても容易ならざることではないでしょうか。もう少し短いスパンで成果を確かめ、目標達成への手応えが得られる機会が必要です。

❏ 出口に向けた学力形成を正しく評価できる考査が前提

定期考査や日頃の課題が、本番の入試で求められる学力要素をしっかりと含んでいれば、それらに挑んだ結果/出来栄えに照らして、そこまでの学びの成果を確かめられるはずです。

模試の点数が動き始める前でも、「できることが日々新たに増えていく手応え」を授業の中で感じ取っていれば、生徒は「あきらめる」というカードを安易に切ったりしないものです。

しかし、「定期考査は習ったことを覚えれば良いけど、模試は違う」という印象を生徒が持ったままでは、如上の効果は失われます。

出口に向けた学力形成を正しく評価できる考査問題となっていることが大前提であることは言うまでもありません。

"考査問題の妥当性を評価し、最適化を図る"でも書いた通り、目標学力への接近を正しく測れる考査は、学びの羅針盤です。

❏ 答案返却時に間違い直しだけを求めたところで…

定期考査を返却したとき、間違い直しを徹底させて既習事項の定着を図ることは大切でしょうが、それだけでは満たされないものがあります。

次の定期考査でも同じような失敗(準備不足)を繰り返すようなら、やり直しを通して「学びの方策」や「タスク管理のスキル」を身につけられなかったということです。

"勉強を好きにさせる学ばせ方 "でご紹介した通り、「テストで間違えた問題をやり直す」という 【調整方略】 は習慣化してようやく嫌いだった科目を好きにさせる効果を持ち得ます。

習慣化以前の「先生に言われてやる」という状態での「間違い直し」には、学びへの生徒の姿勢に有意な変化は期待できないということです。

❏ 成績不振の生徒を呼びだして補習を行っても…

成績下位者を集めて補習を行うのも「間違い直し」と大差ありません。ペナルティ色が前面に出すぎて、生徒は「できれば避けたい体験」と認識するのがオチのような気がします。

実際、呼び出されたから仕方なく参加しているという「主体性とはかけ離れた姿勢」では、補習が終わって解放されればそれで終わりということも少なくないはずです。

そもそも、一度教えて定着しなかったことを、もう一度同じように教えたところで、ドラスティックな変化が期待できるとは思えませんよね。

別のアプローチが必要と思われます。その一つが次節でご紹介する、ある学校で行われていた「次の考査でのリベンジに向けた自習会」です。

❏ 次の考査でのリベンジを目指した自習会

考査で失敗した生徒は、それなりに反省やうしろめたさを持っているはずです。それを次の考査に向けた挑戦欲と具体的な行動に転じさせる機会を作るようにしましょう。

間違えた問題のやり直しは、先生がいちいちチェックするのも大変ですし、間違い直しだけでは同じ問題にしか対応できませんから、費用対効果に大したものは期待できません。

この部分は思い切って、生徒本人を信用して任せる形にしてしまい、次の考査期間からの指導再開です。

考査期間に入れば部活動は原則的に休みになりますので、その時間に教室を開放し、中間試験で低成績に終わった生徒を集めて、期末考査に向けた自習をさせましょう。

❏ 教科書とノートを材料にした自習が原則

自習会では当然ながら教員による「教え直し」はしません。新しい教材も与えません。一度は授業で教えた範囲ですので、やるべきことは教科書とノートとプリントにすべて揃っています。

「それでは何をやれば良いか生徒がまごつく」とのご不安も想像しますが、既習の内容を理解し直しきちんと覚えることすら自律的に行えないのでは、先行きもっと困りますよね。

やるべきことをピックアップし、持ち時間の中に配列するのは高校生が身につけるべきタスク管理のスキルそのものです。

次の定期考査でのリベンジに備える中で、それまで身についていなかったスキルを身につけさせましょう。

"できない?やらない?やらせてない?"でも申し上げましたが、生徒にできるようになってもらいたいことは、やらせてみる中で徐々にできるように導くのが指導者の仕事です。

❏ 参照型教材の活用と教え合い・学び合い

自習を進めながらわからないことに出くわしても、安易に教えてしまわず、まずは参照型教材(辞書・参考書など)に当たらせるべきです。

普段の学習の中でも、初見内容であればわからないことがあって当たり前。自力で知識を補い理解していく方策を学ばせることも重要です。

それでもだめなら、互いに尋ねあったり、教え合ったりすることで、解消を図らせましょう。

教え合い・学び合いの姿勢をもち、協働で課題解決に当たるときのふるまいを学ぶことは、その後の学びにも好ましい影響を及ぼします。

万策を尽くしてなお答えが見つからない、理解できないときにだけ、先生が質問に応じてあげれば十分ではないでしょうか。先輩チューターに監督と質疑応答の補助を任せているケースもありました。

模試を目指した学び直しでも、定期考査に向けた自習会でもやるべきことは既に生徒の手元に揃っています。その中から何を選んでやるか、どうやって進めていくかは、生徒自身に考えさせることが大切です。

何をすべきか迷っている生徒も、自習会の教室でしばらく放置しておけば、他の生徒のやり方を真似てみたり、周りの生徒と相談したりするなど、自分で知恵を使い始めるものです。

教育実践研究オフィスF 代表 鍋島史一

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