三井弘次。
まだ日本映画が元気な頃の作品を観るにつけ、
脇役でも名前の知らない男優女優さんが居るとこの人は誰なんだろう?って思うことが多々ある。
小津安二郎の映画「浮き草」で、小さな旅回りの役者の一人で登場して
べらんめえ調で、いろいろしゃべるシーンが印象的だった俳優がいる。
小さな劇団でにっちもさっちも行かなくなり、役者同士で「おい、もう有り金盗んで逃げよう」
と相談されるが、それを「やめとけ!」と諭して止めるのに、その後、その男が一人で盗んで逃げてしまい、劇団は解散の憂き目になってしまうという役で。
その人が、昨日、読んでいた矢野 誠一(日本の芸能評論家、エッセイスト)のお書きになった
「酒と博奕と喝采の日日 さらば、愛しき芸人たち2」
と言う本の中で、
「三井弘次」 (写真1,2)と知る。
しかし、その俳優さんの名前は全く知らずの昨日まで、で、
脇役の隣に居る脇役ってな位置にいるので、他の映画に出ていてもわからず。
それでも小津や黒澤作品では頻繁に呼ばれていて、
黒澤明監督の『どん底』(1957年)での出演では、毎日映画コンクールとブルーリボン賞の助演男優賞を受賞したくらいの名優で、主役級の俳優さんが遅れてきたり、失敗すると戦前から俳優をしているから大ベテランなので監督以上に怒ってボロカスに注意したほど、だったが、日常ほぼ酒を飲んで暮らしていたとかで、東宝の舞台に出演した時に、主役の三益愛子から、一緒に仕事したくないと言われたくらい酒臭かった、と。
その飲酒が元で心不全で亡くなるが、それでも1976年に69歳に死去するまで活動している。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E4%BA%95%E5%BC%98%E6%AC%A1
晩年にはテレビにも出演されているが、私は憶えていない。
こういう俳優さんだと、東宝円谷特撮映画やテレビの特撮ドラマに、チョイ役でも出演していたら、
名が残るはず、なのに、ウィキを観るとその筋の作品には元々が松竹の俳優さんだったせいか、全く出演されていない。
ネットの検索で古い映画や監督、俳優のことを書いているのは
ほとんどが過去に書かれている本からの写しか、個人の見た記憶の範囲なので、
人物本人の生き方までを知るのは、きちんとした評論家の本を読まないとわからない。
古い映画を見るときの楽しみのひとつが増えた。